04年11月8日 『<映画の見方>がわかる本』
 の『<映画の見方>がわかる本』(洋泉社2002)読了。副題が2つあって、Understanding Cinema of 1967-1979と、『2001年宇宙の旅』から『未知との遭遇』まで。アメリカンニューシネマの時代を代表する映画を、シナリオやインタビュー記事などの資料を駆使して解読していく。おすすめ。

04年11月7日 おいおい
 ファルージャ総攻撃。イラク全土に非常事態宣言。再選したらいきなりこれかよ。

04年11月6日 FC東京〜アメリカ大統領選
 土曜日。午前中、教材の原稿仕事。明日の日曜日は特別テーマ授業があります。ああ。
 ストレス発散のため、サッカー観戦を思い立ち、昼食後味スタへ。思い立ったらすぐ行ける。府中に住んでると、こういう時に便利。ホントはチャリンコがいいのだけど、ここ数日風邪気味で頭痛が抜けないので、京王線利用。京王線は味スタで試合がある時は、スタジアムのある飛田給に特急と準特急が停まる。準特急を利用すれば最寄りの分倍河原駅からは僅か2駅。

 どうだ、いいだろう、とサッカー好きの知人複数を思い浮かべながら書いてみる。

 試合は、FC東京vs大分トリニータ。東京、先日のナビスコカップの激闘の影響か、動きが鈍く、ミスが多い。凡戦の雰囲気濃厚。久しぶりに観にくるとこれかよ。
 前半を0−0で折り返し。後半に入って、温存していたルーカスを投入し、ようやく攻撃が活発化。それでも攻めきれず、ときおり大分のカウンターをくらう。ようやく終了10分前くらいになって、ルーカスが1点ゲット。周りと一緒にこぶしを突き上げ絶叫し、よっしゃ、このまま勝利やと思ったら数分後、これも後半から投入されていた大分のオリンピック代表FW高松に折り返しをセンターからドンピシャで決められ、結局そのままタイムアップ。1−1の引き分け。あいや〜。それにしても、高松、存在感あるわ。オリンピックで平山からレギュラー奪ったのも納得。なんで大分は、頭から使わないんだろ。誰か詳しい人教えてください。

 アメリカ大統領選関係のサイトをあさっていたら、アメリカ在住の映画評論家、のサイトに行き着く。わたくしが、10月25日、11月3日の項で触れた、アメリカの都市と田舎の分裂について、アメリカ在住者の視点でより具体的に述べられています。ここの11月1日の日記にリンク張られている、オジー・オズボーンのは必見。

04年11月3日 あと4年
 北東部・五大湖周辺・太平洋岸が青(民主党)、それ以外が赤(共和党)と明確に色分けされたアメリカ大統領戦の政党別獲得州の地図を見て、ああ、やはりと思ってしまう。やはり、アメリカの田舎者が世界の命運を握っていたかと。同時に行われた上下両院選挙でも、共和党が勝利。ある意味、当然の結果。マイケル・ムーアの言う“stupid white men ”が人口の多数を占める国で、連中が宗教右派などによって効率的に組織化されれば、結果はこうなってしまうのは明らかだったはずだ。

嫌な言い方だが、ブッシュ政権とは、衆愚とそれを利用する金権勢力による政権である。南北戦争の末期、リンカン大統領は、友人への手紙で資本の支配と腐敗の時代、すなわち金ぴか時代の到来を予言した。「この国の金権勢力は、あらゆる富を僅かな者の手中に集中させ、共和国を破壊してしまうまで、その統治を引き伸ばそうと努めるでしょう」(『新書アメリカ合衆国史2フロンティアと摩天楼』(講談社現代新書,野村達朗,1989)。

 南北戦争後の金ピカ時代を第一次とするならば、第一次世界大戦後、永遠の繁栄を謳歌し、共和党の3人の大統領が続いた1920年代が第二次、冷戦勝利後、グローバリゼーションと新自由主義が唱えられた現在が第三次ということになるのだろうか。

「レッセ・フェール(自由放任)の理論が絶対視され、政府による実業規制は不必要、不正だと考えられた。アダム・スミスが『国富論』で唱えたレッセ・フェールは独占打破をめざすものだったのに、19世紀のアメリカでは、民間市場に発生した強力な独占体にも規制を加えるなという主張に変質してしまった。」(同書p.12)これは、第一次金ぴか時代について述べた文であるが、ほぼそのまま現在の新自由主義の説明としても、通用しそうだ。

ちなみに、第二次金ぴか時代たる1920年代の共和党政権の時代は、「共和国を破壊してしまうまで、その統治を引き伸ばそうと努め」たあげく、1929年に世界恐慌を引き起こしてしまったのは、みなさんご承知の通り。

もちろん、単純な比較は出来ない。1920年代には白人中産層が拡大し、繁栄の恩恵に浴すことで保守化して、黒人差別の深化、移民排斥運動、社会主義や労働運動の弾圧といったアメリカニズムの時代となった。逆に現在のブッシュ政権では、第三次産業革命の影響もあって白人中産層の急速な解体が起ころうとしている。危機感は、徐々に募り始めている。それが、都市部における民主党の勝利となったのだろう。

 しかし、今回の選挙では、その危機感が全米に浸透したとは言えず、保守的な価値観を強調して地方居住者の心情に訴えた共和党の選挙戦略が、勝利をおさめてしまった。残念ながら、本当の破局が到来しなければ、新聞も雑誌も読まず、TVしか見ない、もちろん自国と世界の歴史に対する基本的な知識もない stupid white menにはわからないらしい。

今回の選挙に際し、アメリカの経済学者が連名で、双子の赤字を生み出しながら、なおかつ富裕層に対する減税政策を強硬しようとするブッシュ政権の経済政策を批判した。いままさに「金権勢力は、あらゆる富を僅かな者の手中に集中させ、共和国を破壊して」しまおうとしている。そのブッシュ政権が、今後4年間で政治的・経済的に世界の破局を導いた時、「忠実なポチ」として「アメリカによる理不尽な行為を翼賛し続け」た日本は、どう対応するというのだろうか。

 もっとも、今回の大統領選挙の結果については、ケリー政権が誕生したとしても、新自由主義に基づくアメリカのグローバリゼーション戦略に代わりはなく、残りの世界がアメリカから被る迷惑には、大差ないだろうという予測もあった。

 そうであるならば、むしろ「わかりやすい悪」としてブッシュ政権が残り、その政権内ではパウエル国務長官の退任などで宗教右翼の勢力が強まり、共和党が上下両院を制したことで、よりその「悪」が強化されることで、対応がとりやすくなる。アメリカ盲従を唱える人々の主張も、力を失っていく。だから、かえってブッシュ政権が存続して良かったという議論も成り立ちそうだ。

 とんでもない話だけど。


04年11月1日 『不安の正体』
 『不安の正体』(金子勝,アンドリュー・デウット,藤原帰一,宮台真司)読了。金子勝の「ヨーロッパ型社会民主主義」、藤原帰一の「冷酷な鳩」、宮台真司の「リベラル」。わたくしの立ち位置も、多分そうしたところにあり、しかもこの対談集のテーマが「九・一一以降、ブッシュ政権は世界をどう変えてしまったのか、あるいは現に起きている歴史的変化は不可逆なのか」という、他の多くの人々同様、私も少なからず関心を持っているテーマであったので、興味深く読んだ。明日はいよいよアメリカ大統領選であり、一方で日本人青年がアルカイダ系組織に拉致されて殺害されるという事件が起きたばかり。

 「・・・03年1月に設立された国際刑事裁判所についても、日本が旗振り役をしていたのに、クリントンからブッシュ政権になって、せっかく署名した条約を批准しない方針に変わるや、てのひらを返したように日本も批准拒否で、世界中を驚かせました。(中略)「アメリカによる理不尽な行為を翼賛し続ける馬鹿な日本」というイメージは内外に深く浸透しつつあって、今後わが国による、いかなる道義の主張も、国際社会では嘲笑されるようになるでしょう」(pp.146-147)