第二次産業革命と社会の変化 一橋大学 1995年度
次の文章を読んで設問に答えなさい。
「すでに20世紀の技術の発展は,われわれが今日第二あるいはむしろ第三の産業革命に直面していることを示している。しかしこんないい方をすると,この革命が新しい種類のものであり,計画的な科学研究が個々の職人的な発明の才にますます取って代わりつつある革命だという事実が,あいまいになるかも知れない。そのうえ,あの産業革命は,おもに動力の産出と伝達に関与したもので人間をつらい筋肉労働から原理上解放するものだったが,20世紀の革命は,おもに労働者の熟練を機械ないしは電子装置でおきかえることにあり,これは人間を単調な事務的ないし機械番人的な仕事の重荷から解放すべきものである。」(J.Dバナール『歴史における科学』より)
引用文のなかでバナールは20世紀の「産業革命」を「むしろ第三の」それであると評価しているか,それでは第二の「産業革命」とはなんであろうか。 いくつかの産業をとりあげてその特徴を具体的に説明するとともに,「第三の産業革命」との関連を明らかにしなさい。解答にあたっては以下の事項に必ず言及し,下線を引いて明示すること。(40O字)
 内燃機関,  ファラデー,   人造繊維,  電話機

解答例
第二の「産業革命」は,19世紀後半から展開したもので動力源には石炭に代わって石油や電力が用いられ,軽工業にかわって重化学工業が中心となり,科学研究の成果が技術開発に転用された。ファラデーによる電磁気の研究は,ベルの電話機の発明やマルコーニの無線電信の発明を生んだ。マイヤーとヘルムホルツのエネルギー保存の法則の発見は,ダイムラーによる内燃機関と自動車の発明に応用された。リービヒの有機化学の研究は,化学肥料や人造繊維の発明につながった。しかし重化学工業中心であったことは,生産設備の巨大化を必要とし,大企業による独占を進展させた。そこでは個人の創意よりも組織の優位が重視され,仕事は単調な事務と機械番人的なものとなった。それに対して現在進行中の第三の「産業革命」は,情報と通信を中心とするものであり,個人の創意や能力が重要となることで,現在の社会の単調な仕事から人間を解放すべきものとなっている。