出題年:1993年
出題校:京都大学
問題文
10−11世紀は、西アジアにおけるイスラム世界の歴史の展開の中で、1つの大きな転換期であったと考えられる。このように考えられる理由を、政治・社会・宗教の3つの側面から、300字以内で具体的に説明せよ。(20点)

解答例
政治的には10世紀にアッバース朝が衰退し、ファーティマ朝や後ウ
マイヤ朝がカリフを称してイスラム世界が分裂し、各地にイラン系
やトルコ系の地方政権が成立した。また、ブワイフ朝がアッバース
朝カリフから政治の実権を奪い、続いてセルジューク朝がスルタン
の称号を得たことで、政教の分離が確立した。社会面では、給与支
払いのアター制にかわって軍事奉仕の代償に一定地域の徴税権を与
えるイクター制が普及し、封建化が進行した。宗教的にはシーア派
が台頭する一方、シャリーア確立によるイスラム教の形式化に対す
る反発から、神との合一の境地を目指すイスラム神秘主義のスーフ
ィズムが起こり、11世紀には教団の組織化が進んだ。

補足
・アッバース朝衰退後のいわゆる“イスラムの中世”を問う問題
・91年東京大学、92年一橋大学に類題
・イスラム世界の分裂と政教分離、イクター制の普及、シーア派とスーフィズムの台頭がテーマ


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