出題年:99年
出題校:東京大学
問題文
ある地域の歴史をたどると,そこに世界史の大きな流れが影を落としていることがある。イベリア半島の場合もその例外ではない。この地域には古来さまざまな民族が訪れ,多様な文化の足跡を残した。とりわけヨーロッパやアフリカの諸勢力はこの地域にきわめて大きな影響を及ぼしている。このような広い視野のもとでながめるとき,紀元前3世紀から紀元15世紀末にいたるイベリア半島の歴史はどのように展開したのだろうか。その経過について15行(450字)以内で述べよ。なお,下に示した語句を一度は用い,使用した語句には必ず下線を付せ。

カスティリャ王国 カール大帝 カルタゴ グラナダ
コルドバ 属州 西ゴート ムラービト朝


解答例
前3世紀頃のイベリア半島にはカルタゴの植民都市が繁栄していたが,ポエニ戦争を契機にローマの属州となり,ラテン化が進んだ。5世紀のゲルマン民族の侵入では西ゴート王国が建国されたが,8世紀にはウマイヤ朝イスラム勢力が進出してこれを滅ぼし,その後,後ウマイヤ朝が成立してカール大帝のフランク王国とも抗争した。都のコルドバは,ギリシア・ローマ文化を継承発展させたイスラム文化の中心の一つとして繁栄した。11世紀以降ヨーロッパの経済発展を背景にカスティリア王国などによるレコンキスタが本格化し,北部がキリスト教勢力の支配下に入ると,マグリブ地方に成立したベルベル人のムラービト朝やムワッヒド朝が南部を支配してこれに対抗した。この過程でアラビア語文献のラテン語への翻訳がトレドなどで盛んとなり,中世ヨーロッパ文化を刺激した。カスティリャ王国とアラゴン王国が合邦して成立したスペイン王国が,15世紀末グラナダにあったナスル朝を滅ぼしてレコンキスタを完成させると,半島のカトリック化が進んだ。