セザンヌ(1839-1906)

19世紀末印象派から出発して、物体や自然の根源的形態の把握を求めた後期印象派を代表する画家。代表作は故郷の名山を描いた「サン=ヴィクトワール山」」の連作。自然物を、円錐・球・円筒として捉えようとするその絵画理論は、ピカソ立体派の原点となり、20世紀絵画はセザンヌに始まると言われるほどの決定的影響を現代美術に与えた。が、その大胆で自由な独創性ゆえに当初は「ピストルで描いた絵」などと評価されてまったく認められず、また第一回印象派展にも出品して印象派運動に初期からかかわっていたにもかかわらず、印象派内部にも彼の絵については否定的な見方が強かった。長い不遇時代には、幼少からの親友であった自然主義作家ゾラとの喧嘩別れも経験している。ドガと同じく富裕な銀行家を父としたが、その父とも摩擦が絶えなかった。ところが皮肉なことに、ドガとは逆に反抗していた父が死んでその遺産が転がり込み、生活の安定を得るようになってきた1886年頃から時代の先駆者として評価されはじめ、死の翌年の回顧展が大成功に終わって、前衛芸術の英雄としての名声が確定する。ちなみに死因は常用していた馬車の値上がりに腹を立て、歩いたところを雨にうたれて発病した肺炎である。