トマス=モア(1478-1535)

イギリス=ルネサンスを代表する人文主義者。エラスムスとの親交で有名で、代表作『ユートピア』はエラスムスの『愚神礼賛』に対する答礼として書かれた。ユートピアは理想郷と訳されるが、本来の意味は「どこにもない場所」。ここでユートピアとして描かれたのは、無為徒食の貴族や僧侶がいなくて、一日6時間働けばよく、教育が普及し、民主主義が確立していて、信教が自由な国である。今の日本は、あと少しかなという気がしないでもないけど、我々には我々の新たな困難があるぞ、と。第一部は、当時のイギリス及び西欧各国の状況に対する批判になっていて、「羊が人間を喰う」と、当時行われていた第一次囲いこみ運動に対する批判があることも重要。さて彼は、人文主義の教養ある若き国王へンリ8世に政治改革の期待を寄せ、またヘン
リ8世の彼に対する信頼も篤く、その懇願により、大法官になる。しかし、それが運命を決した。ヘンリ8世の離婚と首長法に反対をつらぬいた彼は、結局ロンドン塔で処刑され、その生涯を閉じるのである。