フロベール(1821-1880)

「ボヴァリー夫人は私だ」という言葉であまりにも有名な、写実主義文学の確立者。いなか医者の美しい妻の不倫と自殺を描いた『ボヴァリー夫人』(初出時には風俗紊乱の疑いで告訴される)や半自伝的作品『感情教育』が有名。青年期に神経症の発作をおこして以降は世俗との交わりを断ち、ノルマンディー地方の生地ルーアンに隠棲して文学にのみ奉仕する生涯をおくる。モーパッサンは彼の愛弟子である。『紋切型辞典』という、誰もが知っていることばかりを編纂するという奇妙な辞典を構想したことでも知られる。映画や文芸愛好者、大学若手研究者にカリスマ的な影響力を持つ(持っていた)、前東大学長の蓮實重彦が専攻にしている。