次の文章は1939年4月28日のヒトラーの演説からの抜粋です。これを読んで下記の問に答えなさい。

私はドイツの無秩序を克服し,秩序を回復して,わが国民経済のすべての分野で生産をいちじるしく高めた。私はドイツ国民を政治的に統一しただけでなく,軍備もととのえた。さらに私はかつて民族と人間に要求されたことのない賤しい無法行為を,その448個条に含むかの条約を,一つまた一つと取り除こうと努めた。私は1919年に奪われた地方をドイツに再び取り戻した。私はわれわれから引き離された何百万もの実に不幸なドイツ人を再び故郷に連れ戻した。
(セバスチャン・ハフナー『ヒトラーとは何か』赤羽龍夫訳)

問 ヒトラーが国民の支持を獲得したナチス政権の社会経済政策と外交政策について,具体的に説明しなさい。(400字以内)


解答例
ナチス政権成立時に,ドイツは世界恐慌の影響で失業者が600万に達していた。そこでアウトバーンの建設など大土木事業によって失業を吸収し,さらに四カ年計画で軍需産業の振興によって景気の回復に努めた。一方で休暇旅行など,国民への娯楽の提供につとめ,ユダヤ人など少数派を敵とし,ドイツ民族の一体感を高揚させたことも,多数派からは歓迎された。外交ではヴェルサイユ条約によって軍備が制限され,ドイツ領が削減されたことに対する国民の不満に対し,軍備平等権を主張して国際連盟から脱退し,人民投票でザールを獲得した後,徴兵制による再軍備を行った。そしてラインラント進駐も敢行してロカルノ条約も破棄した。その後民族自決を主張して1938年にオーストリアを併合し,チェコスロヴァキアに対しても,ドイツ人地域であるズデーテン地方の割譲を要求し,英仏の宥和政策により,ミュンヘン会談で同地方獲得に成功した。