第八回 マンガを読むのが仕事です─3月の新刊マンガ(の一部)─

《秋田書店》

『ドカベン プロ野球編』52巻(水島新司)

 非常に慌ただしかった「プロ野球編」もやっと終了。実際のシーズンに併せて話を進めていくという方法は適切だったのだろうか?

 この続きを読みたい方は「スーパースターズ編」でどうぞ。ますますてんこ盛りで、わたしは食傷気味です。
(評点4.5)



『やじきた学園道中記』23巻(市東亮子−ファンサイト−)

 十数年ぶりの新刊。なつかしいねえ。とりあえずの顔見せ興行なのか、オールスター・キャストである。
 いまどき番長マンガを読めるのは、やはり秋田書店だけなのだが、昔のマンガの文法でここまで描けるのは大したものだと思う。いや、ほんと。

 ところで、矢島の顔がどんどん細くなっていくのはどうしてかな?
(評点5.5)




《講談社》

『バカ姉弟』3巻(安達哲)

 いやあ、傑作だと思うけどなあ。全国の姉と弟はこうあってほしいものだ。

 ご近所さんの日常ぶりがすばらしい。
(評点6.0)




『のだめカンタービレ』8巻(二ノ宮知子


 青春ドラマの直球勝負という意味では、シリーズ最高のテンション。できすぎたエピソードの波状攻撃も心地よし。

 のだめのやる気爆発。峰のくさいセリフ炸裂。千秋もトラウマを乗り越え、いよいよ海外進出か!?

 いつもの「ぎゃぼー」とか「ぶぎゃー」とかが好きなひとには物足りないかな。

 ちなみに、音楽マンガとして読んではいけません。
(評点7.0)




『魁!!クロマティ高校』9巻(野中英次)

 アニメ、けっこう人気高いらしいです。いまさらのように日経流通新聞がこの作品をとりあげてました。恥ずかしい〜。

 でも、絵本は大失敗だな。そちらはとりあげる価値なし。
(評点5.5)




『バカボンド』19巻(井上雄彦)

  まだ小次郎編。前巻で、ちょこっと武蔵(たけぞう)が出てきたけど、ちょっとやりすぎなのでは? みんな我慢強いよ。

 ま、面白いけどね。
(評点6.0)




『天才柳沢教授の生活』23巻(山下和美

 可もなく不可もなく。

 青年・柳沢には、柳沢教授ほどの魅力を感じない。「成熟」することは、やはり大事なことなのだろうか?
(評点5.0)



『恋風』4巻(吉田基巳)
 とうとう、おにいちゃんは同僚から「変態」よばわりされてしまいました。

 真性近親相姦(一歩手前)マンガ。

 昨今の妹ブームを蹴散らす勢いで頑張ってもらいたいものだ。

 で、アニメはどうなの?
(評点6.0)



『もっけ』3巻(熊倉隆敏)

数多いもののけマンガの中にあって、珍しいお手軽テイスト。あえて重くしない、ということか。

飄々としていて、読んでいて気持ちがいい。
(評点5.5)



《集英社》

『DESIRE』19巻(小谷憲一)

 男子高校生御用達御都合主義的性欲昂進マンガ。

 いつか俺も藤井みたいな生活を、とか思って読むのかな。
(評点4.5)





『リングにかけろ2』12巻(車田正美

 実は大物作家の車田先生。聖闘士星矢のイラスト集も好調な売れ行きです(アニメ版のほうは)。

 菊・竜姉弟と剣崎のその後を、いつ明確にするかということだけが、このマンガの興味の焦点なのだが、どこまではぐらかしていくのでしょうか。
(評点4.5)




『GANTZ』12巻(奥浩哉)

 なんか印象が薄いんだな、このマンガ。主人公のキャラが立っていないせいかな? 設定は面白いのになあ。興味のある方は読んでくだちい。
(評点5.0)





『変人偏屈列伝』(鬼窪浩久/荒木飛呂彦)

 ひと昔前に描かれたマンガ。作画担当の鬼窪は、今ではすっかりエロ・マンガ家になってしまったが、この作品では雑な荒木飛呂彦という印象。当初、作画も荒木本人の予定だったというから、多少似せようとしたのかも。

 変人というよりは偏執狂なひとたちを扱った作品
(評点5.5)





《小学館》

『かってに改蔵』24巻(久米田康治

 もとの設定からどんどん外れていくのは、久米田マンガの特徴である。この作品もどんどん脱線してきて、いまでは薄めたブラック・コメディみたいになってしまった。

 まあ、それはそれで良しということで。

 地丹母子は、この後どうなってしまうのでしょう?
(評点6.0)




『バルバラ異界』2巻(萩尾望都−ファンサイト−)

 バルバラ島という夢世界が現実世界を浸食していくというお話。

 SFってこれだよね。

 非常にいい作品だと思うので、間違っても「あぶない丘の家」みたいにならないことを望む。
(評点6.5)




『HEAT−灼熱−』16巻(池上遼一/武論尊

 新宿、闇社会、香港という三題噺。

 池上遼一って、絵へただよね。
(評点4.0)





《スクウェア・エニックス》

『鋼の錬金術師』7巻(荒川弘)

 いま一番人気の少年マンガ。累計では『ONE PIECE』だろうが、それは巻数の多さと初版部数の差(=出版社の規模の違い)によるところが大きい。新刊の実売では、こちらが上ではないか。

 分裂騒動後衰退したエニックス(現スクウェア・エニックス)のコミック部門を立て直した。
「ジャンプ」では描けないだろうストーリーもさることながら、なんといっても、脇役まできちんとキャラが立っていることが素晴らしい。
 無意味なデフォルメと、ときおりみせる強引というか御都合主義な展開を修正できれば、鬼に金棒だ。

(評点7.0)





《竹書房》

『ドクタープリンセス』1巻(荻野眞弓

 ごめんなさい。読んだはずなのに、よく覚えてません。
(評点4.0)




《白泉社》

『ああ探偵事務所』5巻(関崎俊三)

 主人公の推理おたくでコスプレ・マニアという初期設定は無きがごとし。どちらかというと、腕力型で人情派である。

 ボランティア(?)で助手をしているOLが、なんかエッチ。

 電話帳の最初にある探偵って、亜愛一郎じゃなかったのね。
(評点5.5)




《芳文社》

『ごめんあそばせ』13巻(丹沢恵−ファンサイト−)

4コマ・マンガの最大の敵はマンネリである。これを懐柔するのか闘うのか、かつての4コマ・ブームを小池田マヤと支えたこの作者も正念場だ。(評点4.0)




《メディアファクトリー》

『超少女明日香学校編』3巻(和田慎二−ファンサイト−)

 ストーリー・テリングで勝負する作家(業界内部の当人評価はよろしくないらしいですが)。明日香のセミ・ヌードをサービス・カットと考えているのは作者本人だけではないか。
(評点5.0)



『ダーリンは外国人』2巻(小栗左多里

 基本的なテーマは「異文化交流」でもなく、「文明の衝突」でもなく、「コミュニケーション」である。この差異が分からないと、このマンガの可能性を読み違えることになる。
 というか、ダーリンの存在感で充分か?
(評点5.5)