ゴッホ(1853-1890)

「太陽」「ひまわり」など強烈な色彩 と線の絵で知られるオランダ生まれの後期印象派の画家。日本の浮世絵に大きな影響を受け,そのタッチは,油絵の具で安藤広重の浮世絵版画を模写する中で得られたものだという。「ひまわり」はバブルの頃,日本の生命保険会社が50億だか60億だかの値で買って話題になったが,生前その絵はまったく認められず、買い手がついたのはわずか一枚だけである。美術店員や学校教員や牧師見習いなどの職についたが、いずれも解雇され、幾度かの恋愛もすべてうまくいかず、みじめさのどん底で画家として生きるしかないと決意し、深い信頼で結ばれた弟のテオドルの経済的援助を受けながら画家としての生涯をおくる。が、画家としての生活も悲惨な色合いに満ちている。彼には精神病の資質があり、その上アルコール中毒であった。彼が死の2年前に住んでいた南仏アルルの市民たちは、彼を家族のもとにひきとらせるか、精神病院に入院させてもらいたいと市長に嘆願書を出している。それからまもなくの1889年12月共同生活を送っていたゴーギャンと喧嘩して自分の左の耳を剃刀でそぎ落とし、馴染みの娼婦に送るという異様な事件をおこしてアルルの精神病院に収容。そののちパリ北方のオーヴェル村で最後の絵を残した後、ピストル自殺を計り、二日後駆けつけてきた弟テオドルの見取る前で死んだ。なお弟のテオドルも悲しみのあまり錯乱して精神病院にいれられ、その6か月後に死んでいる。死後その絵は、現代絵画運動の高揚で高く評価されるようになり、特に野獣派のマティスに影響を与えた。