杜甫(712-770)
盛唐の詩人。「国破れて山河あり/城春にして草木深し」で殆まる『春望』は安史の乱に臨んで作ったものである。玄宗皇帝の時代に生き李白と親友であった彼は、後世詩聖と呼ばれて高く評価されたが、その一生は放浪の一生であった。それも政治に志を持ちながら、官につく機会がなかったり、官についても首になったり、あるいは安史の乱のために地方に難を避けるなど、自ら望んでではない放浪の生涯を余儀なくされた。その最後の二年も長安への帰還を望みながら、湖北・湖南の船の上で漂泊生活を続け、ついに湖江を漂う船の上で死んでいる。またその詩も当時の混乱した世相から一般には知られず、中国第一の詩人との評価が確立したのは、ようやく死後40年を経た中唐の時代である。