出題年:1996年
出題校:名古屋大
問題文
春秋戦国時代は、中国の歴史において、まれにみる大きな変動がおこった時代である。この時代には、古い勢力に支えられた古い政治体制が崩壊し、新しい勢力に支えられた新しい政治体制が形成された。このような変動は、政治、社会の分野だけでなく、経済、文化などあらゆる分野でおこり、後の中国の歴史の在り方を大きく規定することになった。この時代の変動と、その変動によっておこった新しい動きに関して、以下の問になるべく具体的に答えよ。

問1 上文の「古い勢力」と「新しい勢力」とはどのような社会階層からなっていたか60字以内で述べよ。
問2 春秋戦国時代の変動は、いかなる要因によって、どのようにしておこされたか120字以内で述べよ。
問3 上文の「新しい政治体制」は基本的に後の王朝に受け継がれていくが、それはどのような支配の体制であったか、支配者と被支配者の関係に注意しながら90字以内で述べよ。
問4 上文の「新しい勢力」を支配層に組み込むために前漢時代に行われた選抜制度の特色について90字以内で述べよ。
問5 春秋戦国時代の社会変動は経済を活発化し、戦国時代には大量の貨幣が流通するようになった。戦国時代の貨幣の特質と後世への影響について90字以内で述べよ。
問6 春秋戦国時代には、上文の「新しい政治体制」のための政治理念を掲げた様々な思想家が出現した。後世の王朝の統治思想に最も大きな影響を与えた学派は何と呼ばれ、いつ頃どのようにして王朝の統治思想としての地位を確立したか90字以内で述べよ。

解答例
問1
「古い勢力」は,封建制度のもとで血縁秩序による支配層であった宗族の集団であり,「新しい勢力」は,新興の地方地主層である。(60字)
問2
春秋戦国時代には鉄製農具や牛耕の進展によって生産力が増大し,貨幣経済も普及し始めた。このような状況を利用して力を蓄えた諸侯は,春秋時代は「尊王攘夷」を唱えて覇者の座を目指し,戦国時代は有力諸侯の七雄が「王」を称して統一を目指した。(115字)
問3
郡県制は,従来の間接的・分権的な封建制に対し,全国を郡・県にわけ中央から官僚を送り,強大な権力を持つ支配者が被支配者を直接的・一元的に統治する中央集権的な支配体制であった。(86字)
問4
前漢武帝の時代に始まった郷挙里選は,地方長官が有徳な人物を官吏として中央政府に推薦する制度であったが,地方豪族の子弟が多く推薦され,結果,地方豪族の中央政界進出をもたらした。
(87字)
問5
戦国時代には武具を模した刀銭・農具を模した布銭・円形方孔の環銭・貝貨を模した蟻鼻銭など青銅貨幣が鋳造された。秦の環銭の形状は,始皇帝による銅銭の半両銭など後世の貨幣に継承された。
(89字)
問6
儒家。前2世紀後半,前漢の武帝は公羊学説を唱えた董仲舒の献策で,儒家の思想を専制政治を支える国家の官学とし,五経博士を設置して儒学の経典を研究させ,郷挙里選の推薦の基準とした。
(88字)