出題年:2005年
出題校:東京大学
問題文

 人類の歴史において,戦争は多くの苦悩と惨禍をもたらすと同時に,それを乗り越えて平和と解放を希求するさまざまな努力を生みだす契機となった。
 第二次世界大戦は1945年に終結したが,それ以前から連合国側ではさまざまな戦後構想が練られており,これらは国際連合などの新しい国際秩序の枠組みに帰結した。しかし,国際連合の成立がただちに世界平和をもたらしたわけではなく,米ソの対立と各地の民族運動などが結びついて新たな紛争が起こっていった。たとえば,中国では抗日戦争を戦っているなかでも国民党と共産党の勢力争いが激化するなど,戦後の冷戦につながる火種が存在していた。
 第二次世界大戦中に生じた出来事が,いかなる形で1950年代までの世界のありかたに影響を与えたのかについて,解答欄(イ)に17行以内で説明しなさい。その際に,以下の8つの語句を必ず一度は用い,その語句の部分に下線を付しなさい。なお,EECに付した( )内の語句は解答に記入しなくてもよい。

大西洋憲章  日本国憲法  台湾  金日成  東ドイツ  
EEC(ヨーロッパ経済共同体) アウシュヴィッツ  パレスチナ難民

解答例

戦争中連合国は首脳会談を重ねて戦後秩序を構想した。大西洋憲章で示された国際平和機関は,連合国の主要国が安全保障理事会の常任理事国となる国際連合に結実した。しかし戦後連合国は資本主義陣営と社会主義陣営に分かれ,対立が始まった。ヤルタ会談で東西両陣営の分割占領下におかれたドイツは西側の西ドイツと東側の東ドイツに分断された。カイロ会談で独立が約束された朝鮮半島は,戦争末期に米ソに分割占領されて北朝鮮と韓国に分断され,北朝鮮の金日成の南進によって朝鮮戦争が勃発した。ポツダム宣言を受諾し西側の単独占領で分割を免れた日本は,非軍事化政策で日本国憲法を制定したが,朝鮮戦争を機に日米安全保障条約を結び西側に属することになった。戦争中解放区を拡大した共産党は戦後の内戦に勝利して中華人民共和国を建国し,国民党は台湾に移った。一方,大戦で荒廃した西欧では,独仏の対立を排除して平和を維持するためにも,ECSCを経てEECによる市場統合が進められたが,アウシュヴィッツの虐殺など大戦中のドイツのユダヤ人迫害を受けて国際連合がパレスチナ分割を決議し,中東にイスラエルが建国されたことは,中東戦争によるパレスチナ難民の悲劇を新たに生み出した。