03年8月31日 帰京
26日から30日まで帰省してた。いつもに比べて期間も短く、平日ばかりだったこともあって、特にこれといったイベントはなし。何やってたかというと、最後の日に高校時代の友人たちと家族で飲み会やった他は、月末締め切りの校訂の仕事がメインだったり。ただ、あいた時間に、将棋が得意な母方の祖父(もうすぐ88歳になる)のところに、近頃将棋に興味を示し始めた長男を連れていって、手ほどきをしてもらい、長年愛用していた手作りの将棋盤とけっこうな高級品のコマをもらったり、近くの海に行って、上半身だけ裸になって、そのまま息子たちと普段着のまま泳いだり、とそれなりに充実した帰省ではありました。

03年8月25日 おいおい
午前中、懸案だった健康診断を無事済ませる。その場で結果がわかる血圧と心電図には異常なし。午後からは府中の試験場に行って免許証の更新をすませる。この時、講習会で見せられたのが、飲酒運転事故の犠牲者家族たちが、飲酒運転の撲滅を訴える迫真のビデオ。普通、免許証更新の講習会というと、退屈で退屈で、眠気をおさえるのに苦労するのだけど、今回ばかりは犠牲者の訴えにみんな凍りついてしまい、もらい泣きの声すら響き始めたのだった。警察も、もっとこうゆう活動に力を入れるべきだな。あのビデオを見せられた後も、飲酒運転を続けるという人間は、そうはいないだろうし。ついでに、過去飲酒運転の常習者で、逮捕歴まであるアメリカのブッシュ大統領にも見せてやりたいなどと、しょうむもないことを思う。免許証の更新も無事3時頃までに終了。
午前中に健康診断に行った先の病院の医師が、「ついでだから眼底検査もしときましょうか」と眼科に紹介状を書いてくれていたのを思いだし、時間もあることだし、と眼科へ。明日から帰省なんで、本日中にやれることを全部すませておこうと考えたのだけど、最後の最後にちょっとしたショックが。眼科の医師の言うことには、右眼も左眼も、目の奥に異変があって、網膜がところどころ弱くなっており、左眼の方は網膜が破れて孔が空いているところがある。このままだと網膜剥離を起こして、最悪失明です。と。それってボクシングでよくボクサーが引退に追い込まれるあの症状か〜。
でも、殴り合いなんてしてないし。

03年8月24日 全身筋肉痛。
8月23日・24日と、一泊2日で、長男とともに学童保育の夏休み親睦キャンプ大会に参加。なぜかアスレチック補助係りになっていて、2日間の合計睡眠時間6時間以下の状況で、子供たちのアスレチックとつきあう。冷夏のこの夏にあって、この2日間に限って真夏日となり、それはまあ、キャンプ全体の成功という点では大いに喜ぶべきであるし、長男も大いに楽しんで有意義なキャンプであったと振り返ることができるけれどもだけれども、ただでさえ三十郎から四十郎になったばかりで、しかもキャンプ直前まで〆切でぎりぎりと絞られていた身としては、真夏の太陽はきつすぎた。全身筋肉痛。

03年8月23日 大台。
現在8月23日の午前5時。20日からここまで3日間。あわせて10時間くらいしか寝てない。しかし終わった。苦しみ続けた短期特別テーマ授業、「東アジアの近世」のテキストがようやくあがった。9月28日の日曜日、立川校の3・4限に実施予定なので、受験生で興味がある人は受講してください。で、そうやってのたうち回っている間に、22日が終わっていつの間にか23日が来て、そして40歳になってしまっていたのだった。誕生日でした。

03年8月20日 あ〜あ
結局テキストの〆切間に合わず。25日までに完全版下に仕上げて必ず送るからということで、〆切を伸ばしてもらう。

03年8月19日 やばしの二乗
明日はテキストの〆切だが、夜8時から会議がある日でもあるのだ。そういうわけで、テキスト執筆がずぶずぶと泥沼に入っている状況で、明日の会議のための資料も準備しなければならない。どないせぇっちゅうんじゃあと口に出してみても、自分の見通しの甘さがまねいた事態であることには違いない。まずい。ひたすらまずい。

03年8月18日 ますますやばし
テキストの執筆で泥沼状態にあっても、現在は講習期間中。横浜校で1限に短期集中のイスラム史と東南アジア・朝鮮半島王朝史、2限に東大世界史が入っている。問題は2限の東大世界史で、授業の予習準備がこれまた大変。特に今回のテキストには、名誉革命後のイギリスで、イングランド銀行の創設および、議会主権と徴税権の確立(フランスなどに比べ、相対的に重税が可能となった)によって財政面で優位に立ったことが、フランスとの第二次百年戦争を勝利に導いたとする「財政軍事国家論」の新テーマが盛り込まれていたりする。これって山川出版の世界史A「現代の世界史」のp.67に、「フランスとのあいだに第2次百年戦争が続いた。その財政をささえたのはイングランド銀行と公債、そして活発な国内市場からの税収であった。」と、ちゃんと紹介されてるんだな。一橋大学受験と東大受験の人は、要チェック。

03年8月17日 墓穴を掘るだとか自業自得だとか
後期の日曜日に設定されている1日2コマの短期特別テーマ授業のテキスト製作で泥沼に入る。お題は、「近世の東アジア」。元末から明初の時代にかけての東アジアから東南アジアを、中国や朝鮮や日本などといった国別に見ていくのではなく、相互に関連した一つの地域史として捉え直すことが目的。中国史で言う元末から明初にかけての時期が、朝鮮半島では高麗から李朝への交替期、日本では鎌倉幕府の滅亡から南北朝の動乱期にあたる東アジア全般の大変動の時期であり、東アジア地域全体を結ぶ存在として前期倭寇の活動があることは、これまでも指摘されていた。近年はさらに踏み込んで、近世の東アジア史を国家の枠組みを超えた一つの地域史として理解しようという研究が世界史、日本史問わず盛んで、大学の入試問題も必然的にそうした視点から出題されることが多くなっている。その新傾向に対処しようというのが、この短期特別テーマ授業の目的。が、新傾向ということは、新しいということで、新しいということは、前例がないということで、前例がないということは、自分で一から組み立てなければならないということだったりする。世界史の教科書と日本史の教科書を数冊づつ、関連箇所を比較検討したりだとか、基礎作業にひたすら時間をとられ、これはまずいといまさらながら焦っている。〆切は20日。

03年8月16日 中島みゆきづいてしまった
銀の龍の背に乗って」を購入。映像的イメージが鮮やかな佳編。ボランティア活動やNGO活動やってる人、そういう活動に共感を持っている人に特に強く訴求する歌曲であろうと思った。「命の砂漠」に「雨雲の渦」をもたらす「銀の龍」は、医者であればその身につけた医療技術というように、おのおのが社会に還元し貢献できる技量や知識や、あるいは意思や体力であると解したのだけど、どんなもんかな。

03年8月15日 ファイト!
が中島みゆきをカヴァーした「ファイト!」を購入。中島みゆきに詳しくない、あるいは詳しくなりたくない人でも、「ファイト!」という歌曲の「ファイト! 闘う君の唄を 闘わない奴等が笑うだろう ファイト! 冷たい水の中を ふるえながらのぼってゆけ 」というサビの部分は、どこかで耳にしたことはあるのではないだろうか。CM曲としても何度か使われたし、最近では福山雅治もこの曲をカヴァーしたと聞く。その他、吉田拓郎やJUDY&MARYのYUKIなどもカヴァーしていて、日本の歌曲のスタンダードナンバーの一つといっても誇張ではないはずだ。
さて、「あたし中卒やからね仕事を もらわれへんのやと書いた」という衝撃的な歌い出しで始まる「ファイト!」については、「1980年代初期の情景をうつしたもので、今の日本は違う」というような評を、あちこちで目にしてきた。でも、今回、20代前半と若いアナム&マキの「ファイト!」を聴いて強く思ったことは、バブルの陶酔と、その崩壊後の自失の時代を経て、過去のものとされた「ファイト!」の情景が、現在の日本に戻ってきているということだ。中流幻想が崩れ去ったあとに我々が見いだしたものは、実際には当時と何一つかわらないまま放置されていた弱きもの、小さきものの過酷な状況であり、「勝ち組み」とされる人も、いつそこに転落するかわからない荒涼とした現実であり、だった。我々は、いまこそ「ファイト!」を必要としているのではないか。切実に。

03年8月14日 専門書がこんなに面白いなんて
明清交替と江南社会』(岸本美緒、東京大学出版会、1999)を読み始めた。著者は新課程版の山川出版「詳説世界史」の執筆者の一人。「やや個人的な事情も含めてできるかぎり素朴率直に私の考え方を表現してみようと思った」という序に、圧倒される。マルクス主義など戦後史学に対抗する新しい研究方法としての、「地域社会論」の論客として認識されてきた著者は、にもかかわらず「自分の外にあって自分を束縛する枠」としての方法論をやんわりと否定して「現在でも、「方法論」を前面に押し立てて学界のヘゲモニーを握るべく相手を折伏する、といったことには興味はなく」と言明し、「むしろ、「地域社会論」に対する私の関心が、「地域社会論」の一般的正しさに対する私の確信に基づくというよりも、私の昔からの性癖や好みに基づくものであることを正直に示し、その妥当性について読者の判断を仰ぎたいと考える」と述べる。すごい。
私たちは(私は、か)、自分がよって立つ方法論の普遍的一般的絶対的正当性を振りかざすことで、矮小な自分を正当化したり権威づけたりしがちであるのに、そこんところをまずばっさりと斬って捨てている。そして「昔からの性癖や好み」については、中学・高校時代に保守主義を標榜する批評家で、一般的にはブラウン神父シリーズの探偵小説で知られるイギリスの批評家・小説家のチェスタトンに熱中したことを記し、「私が保守主義者かというと自分ではよくわからないが、少なくとも、次のような感覚は漠然とあった−この世の中がそれなりに運行されているということに対する驚嘆の感覚。当たり前の日常的な通念のなかに何か貴重なものがあるという感じ。この世の中を運行させてゆくことの大変さを無視した居丈高な現状批判は好きではない、など。」と告白する。
中学でチェスタトンというところがすでにただ者ではなくて、わけのわからん敗北感すら感じてしまった。チェスタトンは、小説家も傾倒する批評家・小説家で、バーナード・ショーなど同時代の「新しい」作家・批評家・思想家は、チェスタトンの前ではこてんぱんで手も足も出なかった。そういう人物です。

03年8月13日 茄子
「茄子 アンダルシアの夏」のアニメ&マンガのコラボbookが講談社から出ていたので買う。ついでに「ユリイカ」8月号が、黒田硫黄特集だったので買う。

03年8月12日 眠い
「世界史重要テーマ攻略(ヒトとモノのネットワーク)」。世界史研究の新しい動向に対応して出題されるようになった新傾向入試問題の対策として設置された講座で、テキストも気合いが入っていて担当する当方としてもやりがいがあるのだが、如何せん、予習にものすごく手間がかかる。そうすると必然的に睡眠時間が削られる。本日は、東北沢から下北沢までの1駅を小田急線で行って、下北沢から吉祥寺行きの井の頭線に乗り換えるつもりでいたら、東北沢で小田急線に乗り、座席が空いていたので座ったとたんに猛烈な睡魔に襲われ、はっと気がつくと下北沢駅で、すでに目の前でドアは閉まろうとしていた。たった一駅の区間を乗り越してしまいました。

03年8月11日 時差
本日から夏期講習の第2ラウンド。駒場校で1現「ヒトとモノのネットワーク」、2現「総合世界史論述演習」、その後、立川校に移動して4現に「総合世界史演習」。河合塾では、平時の時間割りでは理社科は午後からに固定されている。すっかりそのリズムに身体が慣れているので、夏期講習や冬期講習で午前中の仕事が入ると、拒否反応が出る。朝、絶対起きなければという強迫観念にとらわれて睡眠が浅くなり、日頃乗り慣れていない満員電車で、消耗を強いられる。その結果、移動の時間など、猛烈な睡魔に襲われ、今日など吉祥寺で中央線に乗って座席が空いていたので座ったと思ったら寝てしまい、はっと気がつくと新宿だった。上りの東京行きと下りの立川行きを間違えたまま、気づかず寝てたのでした。

03年8月10日 東京に住むメリット
TV チャンピオンの「チャーハン王選手権」出場者の店が渋谷の東急ハンズ付近にあるのを発見し、長男の夏休み自由工作の材料買い出しを兼ねて、家族で出かける。チャーハンがリズミカルに宙を舞う神業を生で見て驚嘆。ついでに、東京で暮らすことは、こういうことなんだと田舎出身者らしい感慨。それだけだと困るんだけど。

03年8月9日 久しぶりに会ったのに出てくる話題といったら
青山ミステリの同年代の友人たちと3人で下北沢で飲み会。「アンダルシアの夏」観た。よかったろう。ジョナサン・キャロルどうよ。俺は期待度が高すぎて、こんなもんかと。なに言ってんの最高じゃん。アメリカって、最近ホントやばいんとちゃう。世界中仕事で行って、どこででもやってたアニメが「キャプテン翼」というのはいかがなものか。イタリア人のオタクで現実のセリエAには何の興味もないけど、「キャプテン翼」は好きだと言うやつがいやがってさ。近年の芥川賞はホントつまんねえ。純文の連中って教養が狭いから、他から引っ張ってきただけの新人にすぐ騙されるんだわ。ウンベルト・エーコの「フーコーの振り子」絶対はまるから読みなよ。

03年8月8日 筋肉痛
昨日より棚の組み立てに悪戦苦闘。木材が堅くてネジがなかなか入らない。たかがネジ締めに、「おりゃ〜」とか「うりゃ〜」とか奇声を発し、全身の力を振り絞るようにしてドライバーを押し込みつつ捩じる。運動不足の身体に過重な負荷をかけた当然の結果として上半身を中心にいたるところ筋肉痛が発症し、ドライバーの柄があたる右の掌は赤く腫れてずきずきする。こんな時に電動ドライバーがあると楽なのにねーと見かねた妻が一言。その瞬間に妻はあっという顔をし、その妻の表情を見て一拍おいて私も気がついた。電動ドライバー、ある。2年ほど前に買って、買ってから一度も使わなくてすっかり忘れていたけれども。
でも、引っ越しのどさくさでどこにしまい込んだか全く見当がつかず、探すに探せないので、結局おなじなのであった。

03年8月7日 茄子
」を観た。黒田硫黄原作、監督は「千と千尋の夏休み」の作画監督高坂希太郎、テーマは自転車と個人的なつぼにはまりまくりの作品。47分という時間もあり、超感動作というわけではないが、きっとこれから何度も繰り返し観ることになる。

03年8月6日 疲労困憊
1泊2日の河口湖家族旅行より帰宅。祖母の急逝もあってどうしようかとも思ったが、既に料金を払い込んでいたこともあり、祖母に心の中で手をあわせながら、強行。帰宅後、この数日間の無理が祟ったのか、38度近くの熱が出てダウン。

03年8月4日 葬式
昨夜11時30分頃郷里の新居浜に到着。駅まで父母が自動車で迎えにきてくれていた。帰りの道すがら、祖母の最期の様子を聞く。最期はあまり苦しまずにすんだというのが救いであると。翌朝早く、歩いて数分のところにある祖父母の家に行く。通夜の支度がそのままになっている祖父母の家で、祖母の遺体と対面。その後、一旦帰宅し、9時前に再び祖父母の家に。納棺から葬式、骨揚げ、初七日、精進落としまでの一連の儀礼に参加。葬儀場からそのままタクシーで駅に向かい、4時過ぎの列車に。11時頃、府中市の自宅に到着。

03年8月3日 祖母急逝
母方の祖母が脳梗塞で急逝。享年83歳。突然の訃報に驚く。葬式が明日だというので、慌てて準備。

03年8月2日 一段落
やっと梅雨明け。そして立川校の近現代史集中講義終了。とってくれた人、ご苦労様。結局夏風邪でのどがやられた状況が続いてしまい、そこんところは申しわけありませんでした。さて、これで11日まで講習はないので、いつの間にかたまっている原稿の仕事を片づけ、懸案の健康診断もし、免許証の更新をやって、ダンボール箱に入ったままの棚セットを組み立てる。8月5・6日は8月5日の河口湖湖上祭の大花火大会にあわせて、河口湖に一泊旅行にも行ってくると。

03年8月1日 鬱々
長梅雨のまま8月に突入。風邪も回復せず、精神的にはちょっとしんどいかも。金子勝大澤真幸の『見たくない思想的現実を見る』(岩波書店2002)読了。週刊スパでのさかもと未明のマンガなどで、すっかりいろもの的にあつかわれていた金子勝だが、問題の所在の指摘、論の展開は実にシャープ。日本政府が行ってきた公共事業による景気刺激策と地域経済の自立の消失の関連性を鮮やかに解き明かすくだりなど圧巻。マスコミ報道を通じた印象に基づく暴論しか語れない凡百の評論家と比較すると、本業の経済学に加え、関連する歴史学や社会科学の成果にも通暁した本物の学者の、基礎データと現場取材に依拠した分析力の凄さが際だつ。それだけに読後感は一種暗澹たるものになる。「本当に「見たくない思想的現実」を誰も見ようとしないのだ。そこに目をやれば、すぐにわかるはずだ。この社会は、間もなく若い血がめぐらなくなって立ち上がれなくなる。」(第5章「仕事がない?」結びの文)。を更新。現代史部分を追加。