2006年第8回  4月のベストは「江古田ちゃん」です

』(1)(2)巻(秋田書店)

素手で軍隊を壊滅させ、巨大なアフリカ象を打ち倒し、その肉を喰らう父。息子は、想像力によって巨大化させた一匹の蟷螂とスパーリングを行なう(脳内シミュレーションではなく、実体化した蟷螂と闘うのだ)。圧倒的な父の経験に、病的なまでに高まった想像力と感覚で対抗しようというのだろうか。
『男塾』はファンタジーだけど、こっちはどうなんですか?
とりあえず期待させてはくれるけど、不安も、ものすご〜く感じる。

評点……5.5



』(6)巻(エンターブレイン)

実は、非常に古典的なマンガ家。必ず最後のコマでオチをつけようとするけど、そんなに固執する必要はないと思う。かえってこぢんまりとした印象を受けてしまう。そのあたりが限界なのかな?
一生懸命おもしろい話を作ろうとしているのが見えてしまうのがかなしい。

評点……5.0



(角川書店)

キャラクターが全て犬、というファースト・ガンダムのパロディ。ガンダムはもちろん、モビル・スーツは日本各地の民芸品だ。ザクではなくベコで、「赤犬の彗星」シャア犬が乗るのは赤ベコとなる。
アムロ犬とかガルマ犬ザビとか、名前に必ず「犬」をつける粘着質なところといい、途中から尻なめネタで押しまくるところといい、唐沢節が随所に炸裂。
巻末に、犬ガンダム図鑑付き。

評点……5.5



』(5)巻(メディアワークス)

よつばの父親はひとの親としてはどうなのよ。その場のノリで平気で嘘ついたりデタラメしてるものなあ。
ちっちゃなエピソードを積み重ねていくだけで、これといったストーリーがあるわけではないが、それがいい味出してます。変な子どもが周囲をふりまわす(たとえば、『クレヨンしんちゃん』)のではなく、周りが子ども(よつば)をだしにして勝手に回ってる(=楽しんでる)感じ。
最初のロボットネタと最後の海水浴ネタは特に良し。

評点……6.0



』(6)巻(講談社)

やっぱり男のほうがだらしないということですか。
こんな頼りないオレだけど、オレはオレなりに精一杯がんばってるし、それをわかってくれるカワイイ彼女もいて幸せ。ということを夢想したい方はどうぞ。よくいえば、甘酸っぱい初恋の味って感じ?
でも、純なヤンキーというのは幻想ではないのか? なんかとか思い出しちゃったよ。

評点……5.5



』(6)巻(講談社)

やっと「カイジ」らしくなってきた。そもそも、カイジがかつての仲間たちを無条件に信じていたことに、「カイジ」らしからぬ違和感があった。味方だと信じ切っていた人間が、実は敵かも知れないという、そういう心理的葛藤こそが「カイジ」の「カイジ」たるゆえんだと思うのだ。
博打マンガが「信頼」をテーマにしたらいかんよ。そこでテーマになるのは「不信」でしょ。

評点……5.5



』(講談社)アンソロジー

』や『』のヒット(もしかすると『』も含む)に図に乗った講談社の「猫」マンガ・アンソロジー。
一部再録があるが、ほとんど描きおろし。萩尾望都と諸星大二郎の描きおろし短編を読むだけでも、購入の価値あり。特に、前者のマンガが講談社発行の本で読めるなんて、出版社同士の壁も低くなったものだ。
巻末の小林まことのインタヴューは必要だったのか、疑問。『What’s マイケル』と、いまの猫マンガ・ブームには断絶があるのだよ。

評点……5.5



』(2)巻(講談社)

戦国武将にして千利休の高弟である古田織部(左介)が主人公。でも、この左介、粋な茶人ではなく物欲にまみれた変人として描かれている。あの茶入が欲しい、あの茶碗が欲しい。名物、大名物を自分のものにしたい。
己の欲望に正直というか、己の手に届かない物への抑えきれない欲望にもだえ苦しむのだ。自虐的な変態である。
もっとも、ここに出てくる信長も秀吉も、千利休でさえ、欲のかたまりである。
禁欲を是とする家康には信長主従はおかしな集団にしか見えないが、ここでの正義は物欲まみれの左介たちにある。

評点……6.0



』(3)巻(講談社)

癒し系猫マンガの頂点。
バカ売れですよ、チー。ガチャポンになったり、いろんなところで活躍中。
猫好きには、ホント、たまらないらしいですよ。ポイントは、チーの耳かなあ。

評点……6.0



』(2)巻(講談社)

「チー」と並んで売られていることが多いので、癒し系マンガと勘違いされて売れているらしいです。まあ、きっかけはどうあれ、手に取って読んでもらうことが第一ですから。
」シリーズや『』のテイストは保持されているので、以前からの北道ファンも安心して読んで下さい。
ああ、でも、定吉が懐かしい。

評点……5.5



』(1)(講談社)

4コママンガだが、ここには、癒しも萌えも和みもない。あるのは真実のみ。
主役の江古田ちゃんは、自室では全裸ですごすフリーター。彼女のいる男とつき合っていたり、(日本人なのに)フィリピン・パブで働いていたり、常にちょっとずれた位置で生きている。所属する場所があいまいというべきか。あいまいな場所に立つためには足腰が強くなければならないが、江古田ちゃんの足腰は強靱だ。
青年誌「アフタヌーン」連載だが、ぜひとも女性読者の獲得を!

評点……7.0



』プロローグ(1)巻(集英社)

金太郎くん復活。今度は国際金融市場が舞台ですよ。だからといって、まあ、やることは変わらないんだけどねえ。
本宮先生はマンガ界の村上龍になりたいのだろうか?

評点……5.0



』(16)巻(集英社)

野球の技量では負けるが勝負では負けない。
ナベツネやユヴェントスもびっくりの金満トレード、八百長、謀略の嵐。プロ野球を舞台にしたコン・ゲームか? ただ、リカオンズの選手たちがあまりにも無邪気すぎ。

評点……5.5



』(13)巻(集英社)

映画化だって。
ラヴ・コメにおいて、主役の二人がカップルになってから、どうストーリーを展開させていくかというのは難問だ。10年以上前に、ゆうきまさみは『じゃじゃ馬グルーミンアップ』(小学館)で、その「結ばれたふたりのその後」を描いてみせたわけだが、『ラブ★コン』は行き当たりばったりでその場を凌いでいるだけのようにみえる。
連載マンガの宿命なのかも知れないが、出来の悪い80年代のトレンディ・ドラマのようだ。
もちっとガンバレ。今回の小泉のじいちゃんの陰謀は最低だ。

評点……5.0



』(3)巻(小学館)ダンカン/松浦聡彦

』(集英社)もそうなのだが、「お笑い」を題材にしたマンガの場合、話の中に出てくるギャグが面白いものかどうかはかなり重要なポイントとなる。しかも、このマンガは現役(だよね?)の芸人なのだよ。にも、かかわらず……。
ストーリーもおざなりだし、なんか辛い。

評点……4.5



』(1)巻(小学館)

実力はあるが、己の利益のためには手段をえらばない女子アナの物語。いまさら女子アナだし、しかも、なんか不思議ちゃんだし、いまさら報道の良識を問うというわけにもいかないだろうし、この手垢のついた素材を著者はどう料理するのだろうか。
でも、ちょっと期待し

てる。

評点……5.5



』(2)巻(早川書房)

はじめから全てをゆるしていたら、世界が消滅するのは自明の理であろう。だから、このマンガの結末は必然なのだ。
それにしても、描き下ろしの単行本というのは凄いよね。出版社の営業力があれば、もっと売れただろうに。

評点……5.5



』(1)巻(双葉社)/

ただ鉄道に乗り駅弁を食べているだけ。

鉄道マニアが騙されて買うと考えたのだろうか。『』(小学館)がヒットしたからといって、この程度の出来で2匹目のどじょうを狙うとは片腹痛い。これはまず、原作者の責任だ。

評点……3.5



』(3)巻(芳文社)

クラスメイトのめがねくんがいい味だしてる。らいかと二人の初恋物語と読むと、ほのぼのしてくるね。
まあ、ぬるいといえばぬるいんだけどね。

評点……5.5

   

』(1)巻(芳文社)

こっちのほうが、もっとぬるいかも。
売れない酒好き作家と八百屋で働きながらそれを支える妻、という設定。スキをみては仕事をさぼろうとする夫を妻が見つけてはボコボコに蹴りまくるというどつき漫才的展開がかろうじてそれを救っている。

評点……5.5



』(9)巻(リイド社)
福沢諭吉が適塾に入り(手塚治虫の祖父と会い)、クリミア戦争が勃発し(ナイチンゲールが活躍し)、ペリーとシーボルトはあいかわらず仲が悪く、村田蔵六が蒸気船を開発し、勝麟太郎が出世をし、そして安政の大地震が発生する。
今回もいろいろとてんこ盛り。あれだけの出来事をまとめる作者の力量に感服します。

評点……6.5